退学する友人に贈ったトロフィー

「僕は次の年から自衛隊に入隊することになりました。」という、同じクラスの男の子の堂々とした発言には、教室全体がシンとなり、みんながその言葉に耳を傾けていました。これは、私が高校1年生のとき、クラスのある1人の男の子が来年度から自衛隊に入隊することに決まり、その事実をたった1人で教壇に立って、クラス全体に向けて発表してくれたときの出来事です。その入隊の発表に続けて、将来は自衛隊として世界に飛んで、人のために活躍をできる人間になりたいという夢を語ってくれました。その発表を聞いた私は、同じ高校1年生という年齢でありながら、あまりにもしっかりとした考えを持っている男の子に対して、尊敬の気持ちを持ってしまったほどです。そうしてこの事実が知らされたことから、私たちはクラスでそろって、何か男の子にエールを送ることはできないかと考えました。自衛隊に入隊するということは、高校を退学するということであり、たとえ自衛隊という新しい場で勉強するといっても、男の子の学歴がここで閉ざされることに変わりはなく、この時代、学歴がないという恐怖は本当に大きいものです。

そこで私たちは、少しでも力になりたいと思い、ある贈り物を用意することに決まりました。それは、1位という輝きを示すトロフィーです。トロフィーとは、何らかの大会で優勝したり、コンクールなどで賞を獲得した場合にいただくことができるものですが、私たちがこれを贈り物に選んだ理由は違いました。1位を獲ったから贈るのではなく、これから世界で活躍するという夢を叶えようと努力している姿が、誰よりも1番に輝いているという気持ちを込めました。このトロフィーを提案したのは、私たちの担任教師で、その購入も手伝ってくださいました。金銭面だけではなく、購入先とのやり取りをしてくださったり、全面的な協力をいただけた結果、私たちはクラスそろって、その男の子に向けてトロフィーを贈ることができたのです。これを受け取った男の子は、決して涙は見せませんでしたが、とても上ずった声で「ありがとう」と言ってくれたことを覚えています。そうして2年生になったとき、男の子の姿は高校からなくなってしまいましたが、私たちはずっと応援し続けていました。今、あの男の子がどうなっているのかはわからないままなのですが、きっと今頃夢を叶えてくれていると思います。

そしてトロフィーもきっと、手元で輝いているでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*